冥土の土産

キュアップ・ラパパ ?

恋を失った日

精神グラグラクラスメイトの男子に「僕とセックスしてくれないなら死ぬ」と言われて
泣きながら逃げた日 もし私の恋が報われなければAV出ようと決めた

本来少しは愛を囁かなければ内臓の奥までみせられないのがはがゆい
かっこよくなんか生きなくていいよって言う権利が欲しくてAV女優になりたい

音楽も服も好きな人のために生きた
私と言う存在の全てが恋だった
絶対一生この人でないのなら永遠にひとりでいいと思って 処女でした

恋は命がけだ。片思いは希望であり絶望だ。

人生は完璧であるほど薄っぺらに感じる。

花はいつか散る。人はいずれ死ぬ。

なのにどうしてこんなにも醜くてダサくて惨めな思いをしながらも人は恋をしてしまうのだろう。

内蔵の奥まで私という存在を知っていてほしい。身体中が恋に蝕まれる。自分が消えたって構わない。あなたに認めてもらえるのならば。

あなたが笑えば私も笑った。何が面白いのかわからなかったけれど。一生懸命あなたをわかろうとした。わかりたかった。満たされたかった。

優しくされた日は1日中嬉しくて、嬉しくて泣きそうなほどあなたの言葉を頭のなかで繰り返していた。

あまり話せなかった日はひどく落ち込んで、ご飯も喉を通らないほどだった。

これは私にとって唯一の純愛だと思った。

 

だけど叶わなかった。他に好きな人がいると言われた。涙は出なかった。私は乾いた笑いをこぼすだけだった。

その後数日は普段通りにあなたと話したり、笑ったりしていた。このままの関係がずっと続けばいいと思った。

でも、あなたの好きな人に気づいてしまった。

あなたはあの子にだけ、とても柔らかい、優しさに溢れた笑顔を見せた。

ただただ悲しかった。これほど知らなくていいことはないと思った。

絶望の淵に立たされた私は生きる意味を見失なった。

その日から元々あまり通っていなかった学校には完全に行かなくなった。

恋をすること、誰かを好きになるということ。

それは私にとってすごく難しいことだった。

たった一度の恋愛の失敗で一生分の絶望を経験してしまったが為に恋が怖くなっていた。

私はとうとうセックスに逃げようとした。

好きでもない先輩と寝ようとした。

でもやっぱり怖くなって、結局実現はしなかった。

なんだ、馬鹿なふりしてるけど死ぬ程ピュアじゃん自分、と思った。どれだけ自暴自棄になっても結局はなにより自分が大事だったのだ。

強くありたい。叶わず逃した恋に泣く夜も、絶望の淵で首を吊りそうな朝も、強くありたい。

恋が叶わなくたって、私は私でありたい。

つまらないラブソングよりもずっとずっと強く願った私の恋に美しい終わり方なんてないけれど。

それでも私はまた誰かに恋をする。

 

 

たわごと

私は私以外の何者にもなれない。

憧れ、僻み、妬み、そんな感情がごった煮になった午前3時の孤独には誰も抗えない。

私の魂はすり減りながら前へ前へと進もうとする。

愛情はときに凶器になり私を狂気へと追い込む、怖い、怖い、怖い、愛されたい。

まだ感情が生きていられるうちに早く誰かに救われたい。他力本願な人生だって不格好だって愛されていたかった。うまくは行かなかったけれど。

あなたが好きだったもの。私も好きになりたかったよ。好きになりたがっていたよ。でも出来なかった。私は私でしかなかったのだ。

私は何者になれるのだろうか。

私の中にあるどの私が本物なのだろうか。

私の中にあるどの私を選んで殺せば誰かに愛してもらえるのだろうか。

迫る時間、焦燥、呆然と。

アカウントという実態のなさに縋り、一時のコミュニケーションにしがみついてつまらないコンテンツをまるで宗教のように信じきってしまう。

愚かな私。どこにも行けない。

音楽に救われて天国に行ったって5分15秒後には虚無虚空が待っている。

私はいつも傷ついてばかりだ。

他人にナイフを向ける勇気なんてなくて、結局最後は自ら仮想的な死を迎える。

神様、神様、どうか誰も傷つかないように。

私がいちばん好きで、いちばん死を望んだ人がどうかいちばん幸せでいられますように。

ラブソングの歌詞で泣く日々を消して。ひとつひとつの感情を拾って。どうか見逃さないでいて。

安っぽい言葉、それに群がる白黒黄色。

遺影を撮るような気分で自撮りをして、これが私の顔だったっけ、こんな笑い方をするんだっけ、もうわからない。私には私がわからない。

可愛い可愛い自分のこと、本当にわかっていないのは私自身なのではないだろうか。

本質から目を逸らして逃げているのは私自身なのではないだろうか。

口パクで済ませられるような人生、そんなのありかよ、涙を流してだって歌いきらないと意味が無いじゃないか。

気持ち悪い気持ち悪い本質だって私なんだ、私が抱きしめなくて誰が守ってやれるんだ。

メンヘラというカテゴリに私を分類しないでください。私をちゃんと見てください。誰にも守られない私のこと、守らなくっていいからちゃんと見てください。

流星のように消えゆく希望は私に降り注ぐことは無い。誰にでもあるチャンスなんて蹴っていい。唯一無二の輝きでいたいのだ。

毒虫は地を這い私を蝕んでゆくけれど。

ピアノの音は止んでしまったけれど。

雪は降り積もり足場を奪ってゆくけれど。

私は私以外の何者にもなれない。

 

 

YUKIコンサートツアー「Blink Blink」いまさらレポ

八月が終わる。

今年の夏はことあるごとに音楽に命をつなぎ止められた夏だった。

そんな夏の終わりにわたしの最も敬愛するYUKIちゃんについてライブレポも兼ねて書きたいと思う。

7月22日、私は函館アリーナにいた。

YUKIコンサートツアー「Blink Blink」公演1日目。

函館はYUKIちゃんの故郷だ。

会場はツアーグッズを持ったファンでごった返していた。

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(今回のツアーグッズ、どれも可愛い)

迷って迷ってグッズを買い(Tシャツは今回予算的に見送りした)、総額10000とさよならをし、さっそくテンションMAXで会場に入った。

前日のJRの遅れにより(だったはず)少し遅れて上演開始。

暗くなる会場、自然と緩む涙腺。 

YUKIちゃんの登場。涙腺崩壊。

ゴージャスでポップでキュートな衣装に身を包んだYUKIちゃんはまさに女神だった。

 

ここから1曲1曲感想を書きたいのだがYUKIちゃん、今回の公演でたっぷり27曲も歌ったので適度に省きつつ紹介していきたいと思う。

 

1曲目「暴れたがっている」

アルバムの1曲目。やはり来たかと言った感じ。最高のノリで歌い上げる。そして踊る。

最高のスタートを切ったYUKIちゃん。

2曲目「プレゼント」

3曲目「ドラマチック」

4曲目「ハローグッバイ」

歌詞の通り力わなわなとみなぎる曲。

ここら辺からテンションが上がりすぎて時間の感覚が時空を超え完全にYUKIワールドへ。

5曲目「名も無い小さい花」

今回のアルバムより。

「後ろを振り返りしながら訳の分からない影に怯えて眠る日を図書館に返しに行こう」という歌詞がお気に入り。

6曲目「the end of shite」

YUKI初期アルバム「PRISMIC」より。

この選曲はYUKIちゃんの始まりとこれからの活躍をあらわしているなぁと感動した。

7曲目「私は誰だ」

今回のアルバムより。

YUKIちゃんが「私は誰だー!!」というと会場中から「YUKIーーー!!!」と歓声が。

8曲目「こんにちはニューワールド」

これも今回のアルバムより。

歌詞に方言がはいるファン胸アツ曲。

ここでなんとYUKIちゃんが感極まり泣いた。

もちろん私も泣いた。号泣だった。

9曲目「tonight」

10曲目「レディ・エレクトリック」

今回のアルバムより。

「放電してよレディ」の歌詞に合わせて後ろのモニターのYUKIちゃんがビリビリ放電する。

最強の可愛さ。

11曲目「プリズム」

ライブの定番曲。

そして私が必ず号泣する曲。

「わたしはどこかで間違えたかしら 今はわからない答えは雲の上」。好き。

12曲目「ひみつ」

13曲目「バスガール」

今回のアルバムより。

後ろのモニターに映像が映し出される。

盛り上がる手拍子。会場の一体感を感じた。

14曲目「メランコリニスタ」

15曲目「ランデヴー」

とってもとっても人気曲。

弱虫ロミオよさらってくれるの!!!

16曲目「ワンダーライン」

みんなが歌って踊れる曲。

YUKIちゃんはこの曲がまさかライブの定番曲になるとは思ってもみなかった、とどこかで言っていた(覚えておけよ)

17曲目「JOY」

踊る。踊る。とにかく踊る。

腕の痛みが出てくる頃だが全く気にならなかった。とにかく踊って踊って踊った。

18曲目「Hello」

19曲目STARMAN

20曲目「相思相愛」

21曲目恋愛模様

まさかやるとは思っていなかった1曲。

お気に入りなのですごく嬉しかった。

ピアノがめちゃくちゃ素敵でした。最高。

22曲目「2人のストーリー」

私が弾き語りでよくやらせていただいている曲。ただ君を思い幸せを願った。

23曲目「聞き間違い」

今回のアルバムより。

「あの時聞き間違いでないのなら風の中「大丈夫」そう聞こえたよ」

わたしの「大丈夫」もYUKIちゃんに届いて欲しいと心の底から願った。

24曲目さよならバイスタンダー

今回のアルバムより。

「三月のライオン」のオープニングテーマにもなった曲。この曲は歌詞が全体的にドツボ。

25曲目「泣いてる怪獣」

26曲目「WAGON」

カツセマサヒコさんもときどきツイートしているこの曲。ライブの定番曲であり最高のポップなキュン曲。今回も聴けてよかった。

27曲目「トワイライト」

今回のアルバムより。

YUKIちゃんも会場もボルテージMAXの状態。

ここでテープが飛ぶ。必死に手を伸ばして掴み取った。後日隣にいた母に聞いたら「あんた鬼の形相してたよ」だそう。だってライブのテープですよ?そりゃ鬼の形相にもなりますよ。

ラスト

YUKIちゃんがマイクを置いた。

生声での感謝の言葉。

これは泣くしかなかった。

本当にこの人を好きでよかったと思った。

 

というわけでたっっっっっぷり27曲。

今回アンコールはなし。

本当に満足感しかない、幸福感しかないライブでした。

YUKIちゃんの故郷で、YUKIちゃんの声が聞けたことが本当に幸せでした。

まだ感想を書けていない曲が多いのでまた追記したいと思います。

ありがとうございました。

1000文字の、どうして?

「生きてるってことは当たり前じゃない、奇跡なんだよ、だから前を向いて生きよう!」だなんて言われても黙れクソが、程度の感情しか湧かなくて、わたしは毎日を塗りつぶすように生きている。

どこまで塗りつぶせば正解なのかもわからないし、もしかしたら大切なものをもうすでに塗りつぶしてボロボロにしてしまっているかもしれない。

そんな恐怖にとらわれながら毎日すれすれのラインを落っこちてぐちゃぐちゃにならないように、綱渡りするみたいに生きている。

わたしの中にはたくさんのわたしがいて、ときどき全員がわたしを殺そうとする。わたしはそれから必死に逃げて、逃げて、逃げて。なんとか毎日命を繋ぎとめている、そんな感じ。

生きてるってことは当たり前じゃない、そんなの知ってる。死にたいと思うことが世間的には間違ってるのも知ってる。

知ってる知ってる知ってる、知ってる知ってる知ってる知ってる、知ってる知ってる知ってる知ってる知ってる知ってる知ってる知ってるよ、うるさいなぁ、うるさいなぁ、黙ってよ。

常識の範囲内で生きなきゃいけないの、どうして?

ママ、ゆめかわいいが嫌いなの、どうして?

パステルピンクが嫌われるの、どうして?

人前で薬を飲むのが気まずいの、どうして?

わたしにはわかんないよ、わかんないことが多すぎて生きづらいよ、好きな人にはわたしのこと好きになってほしいよ、でもそれも叶わなかったし、好きなものは全部、「当たり前」に奪われていくみたい。からっぽ。

好きなCD、好きな服、好きなお菓子、好きな人。

全部大好きだけど、全部大嫌い、そんな気持ちで毎日生きてるって誰か知ってて。

誰か私に気づいてください。メンヘラだなんてくだらないカテゴリに分類しないで、お願い、わたしをわたしという個体として見ていて、お願い。

味のなくなったガムばっかり噛んでたら、どれが本当の味かわからなくなっちゃって、何色が好きだったかも思い出せない。

ギター、可愛い、お洋服、可愛い、音楽、可愛い、女の子、可愛い、わたし、可愛くない。

この世界で私だけが可愛くなくてつまらなくて、からっぽで、何も出来ない。

どうしてばっかり馬鹿ばっかりの生活、つかれた。

わたしという個体として輝いていたい。優しい言葉を発していたい。毎日平和に暮らしていたい。いたい、いたい、いたい、痛いよ。

こんなわたしの感触、誰かにわかってほしいの、

どうして?

 

 

グッバイマイラヴ💔

おひさしぶりです。きれざわ端娘です。

最近どうもつらくて軽率に死にたがる日々を送っているんですがみなさんどうですか、生きてますか。死んだみなさんもお元気ですか。

さっきチラッとアクセス解析を見たら3700を突破してまして、まだまだ小規模ですがあぁこんなにたくさん見てくれる人がいるんだなぁブログサボって過呼吸起こしてる場合じゃねぇな、と思ったわけで。

ありがとうございます。

 

2週間前にね、わたし失恋したんですよ。

すごくすごく好きだった人に彼女が出来て。

わたしその日好きな人と一緒に帰るはずだったんですよ。でも急に彼女が出来たからそういうことはできないってLINE来ちゃって。

号泣しました。悲しかった。ただただ悲しかったし悔しかった。

でも彼は悪くない。だって人を好きになるのには誰の許可もいらないんだから。

わたしの友達は散々彼を悪く言って蔑んで「あんな奴よりいい人いるよ」って励ましてくれたけどわたしはまだそう思えなかった。

だってずっと好きだったから。

だから今まで2週間、ずっと考えてました。わたしはどうしたらよかったのかな、わたしはどうすれば彼の「好き」になれたのかな、なんて泣きながら考えてました。

だけどそんなことを考えるのも今日で終わりにしたいと思います。ひとつだけ答えに近いものが浮かんだから。

考えて考えて最後にわたしの中に残ったのは、「彼に幸せになってほしい」、ただそれだけでした。

もしそれ以外の感情を抱いたら。もし彼を恨むようなことをしてしまったら何かが終わってしまう気がして。

だからわたしはただひたすらに彼を応援したいのです。わたしの「好き」は死んでしまったけれど彼の新しい「好き」がどうかどうかうまく行きますように。

元気でね、わたしの初恋。

そしてさよなら、好きだった人。

 

 

懺悔

死にたいと泣いた朝がありました、生きたいと願い続けた夜がありました。

 

わたしはうまく生きられません。

特技もありません。

顔も可愛くありません。

スタイルもよくありません。

性格もよくありません。

愛してくれる恋人もいません。

 

だから妬んでしまいます、僻んでしまいます。

幸せでいっぱいなあの子なんて死んでしまえばいいと思ってしまいます。

愛してくれる人がいて、立派な一軒家に住んでいて、優しいママ、明るいパパ、可愛いペットにとびっきりの素敵な、大好きなことがあるあの子なんて壊れて消えてしまえばいいと思ってしまいます。

 

わたしは最低です。

人の不幸しか願えません。

でも人前では、自分のことすら幸せにできないのに他人の幸せを願うふりをします。

わたしは最低です。

 

昨日の夜、死にたさで目が覚めました。

死にたくて泣きました。

でも死ねませんでした。

わたしのことを唯一わかってくれる、精一杯にがむしゃらにわかろうとしてくれる友人の顔がふと頭をよぎって、どうしても死ねませんでした。

もしかしたらもう送ったことすら忘れてしまったかもしれないけれど、その子が2年ほど前に送ってくれた手紙を思い出して、急に死ぬのが惜しくなりました。

裏切りたくないから。

わたしが生きていることを肯定し続けてくれている人をこれ以上悲しませられないから。

 

昨日の夜、生きたさで目が覚めました。

生きたくて生きたくて泣きました。

神様許してください、これ以上わたしを苦しめないでください、助けてください、と祈り続けました。

死にたいと泣くことは、生きたいと叫ぶことです。

 

どれだけ悔しくても、惨めでも、不条理でも、わたしはたった1人の、わたしの命を証明してくれた友人のために生きていかなければいけないんだと思います。

 

こんな生き方でごめんなさい。

惨めなわたしでごめんなさい。

うまく恩返しできなくてごめんなさい。

 

この場を借りて言わせてください。

ありがとう。

本当にありがとう。

普段はなんてことない顔してくだらない話しかしないけれど、あなたはわたしの命の恩人です。

これからも、わたしの大切な友人でいてください。

そして、会ったときはどうかまたいつも通りの笑顔でいてください。

わたしはあなたが大好きです。

 

 

死にたいと泣いた朝がありました、生きたいと願い続けた夜がありました、まっすぐな愛情に助けられた日々がありました。

うみべの女の子読んでみたレポ

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浅野いにお先生のうみべの女の子、ようやく読了しました。ソラニンおやすみプンプンに並ぶ代表作ということでかなり期待をしていたのですがやはり期待を裏切らない浅野いにおワールドでした。

 

主人公は中学生の佐藤小梅。舞台は海の近くの小さな町。そこで小梅は自らに想いを寄せる同級生磯辺と身体を重ねてしまう。

そこから物語が始まります。

 

まず感じたのは2人が身体を重ねるシーンの生温かさ。息づかいまで伝わってきそうな描写にどきどきしてしまいました。

 

そしてやはり中学生という儚い幼さがこの物語の要になっていると感じました。触れたら壊れてしまいそうな小梅と磯辺の関係。

むしろ壊れる時を今か今かと待っているような2人の距離感が時の流れを一層リアルに表現していました。

何度も何度も身体を重ねるうちに2人の間にはなんとも言えない惰性と、小梅の想いが生まれてきます。

 

第19話、磯辺は笑顔を作り小梅を突き放します。

 

「あたしはずっとずっと磯辺が好きだった でも気づいた時にはもうなんか……なんかもうどうしたらいいのかわかんなくて こんな感じになったのも磯辺に嫌われたのも……全部あたしのせいだってわかってるけど やっぱり磯辺のことが好きだしずっと一緒にいたいって思っちゃうから あたしがんばるから……優しい人になるから あたしと…付き合ってください……」

 

心の奥底から捻り出した小梅の告白。

でもこの思いが磯辺に届くことはありません。

最初は磯辺のほうから想いを寄せていたはずなのに、ずっと一緒に、なんとなくの関係で一緒にいられると思っていたのに。

 

海に向かって嗚咽を漏らす小梅に胸が締め付けられました。なんとなく日常にあったものがどんどん大切になってしまって、身体を重ねてしまって、でも心が重なることはなくて、どうしようもない苦しさがありました。

 

身体を重ねるということ、相手を想うということ。当たり前が当たり前じゃなくなること。そんなことって意外とたくさんあって、でもその終わりを受け止めるにはあまりも若すぎた中学生の小梅。

 

そして20話、小梅は高校生になります。

まるで磯辺なんて最初からいなかったかのように、平凡な小梅の生活は続いていきます。

 

ここで注目するべきなのが「幼さと時間の流れ」です。幼さゆえに月日はめまぐるしく流れ、周りを取り巻く環境も変わっていきます。

小梅の中から磯辺が完全に消え去った訳ではありません。でも変わらなければいけないこと、変わっていってしまうもの、磯辺はそんなものになってしまったのだと思います。磯部の中の小梅も同じように。

 

とにかく全2巻、読んだ感想は「人間の生温かさ」です。切なさも苦しさも大切なこともどうでもいいことも全部、磯辺と小梅の関係に詰まっていたように感じました。

 

「この街には真夏になってもあまり賑わうことのない小さな浜辺があって

自分はその浜辺を何かを探しながら歩くのが好きだった

しけた花火とか 昆布とか 風に飛ばされた誰かの帽子とか

大抵期待したものは見つからないし

もしかしたら初めから何も期待なんてしてなかったのかもしれないけれど」

 

この台詞にまだ遠い夏を感じました。